ニュース
202507.15
国内初、実測による畜産(牛)GHG排出量削減のボランタリーカーボンクレジット発行
JA鹿児島県経済連(鹿児島県鹿児島市、経営管理委員会会長 柚木弘文)と株式会社Linkhola(東京都港区、代表取締役 野村恭子、以下「Linkhola」)ならびに株式会社AmaterZ(本社:北海道札幌市、鹿児島事業所:鹿児島県鹿児島市、代表取締役:矢島正一、以下「AmaterZ」)は2024年7月から開始した「未来畜産GHG*1排出量削減-kモデル」の第1段階として、肉用牛におけるGHG排出量削減の実証試験を行い、68t CO2e*2の排出量削減に成功しました。
今回の実証試験では、JA鹿児島県経済連の肉用牛実験農場の開放型牛舎において、2024年11月から2025年5月までを試験期間として、対象牛に補助飼料*3を給餌することによるGHG排出量の削減を目標としました。このGHG排出量の算定に当たっては、AmaterZの提供するアニマルゾーン*4測定システムtukumo、モニタリングのノウハウ、宇都宮大学農学部 池口厚男教授 監修によるGHG算定ロジックを活用し、実測データに基づいて算出しました。
また、JA鹿児島県経済連とLinkholaは、民間主導のボランタリークレジット*5制度であるEARTHSTORY*6において「畜産(牛)における実測型の計測・モニタリング手法を推奨したGHG排出量削減の方法論」を開発し、AmaterZと三者共同で実証事業を進め、カーボンクレジットの創出を目指してきました。従来のクレジット制度においては、統計値(インベントリデータ)をもとに算出されることが多かったのに対し、今回のプロジェクトでは、実際の飼育環境下で継続的にモニタリングし実測データに基づいて排出量削減を算定したもので、この結果は、国内初の取り組み成果となります。
以上の取組みにより、EARTHSTORY制度の審査においてプロジェクトの妥当性および、2025年7月3日にカーボンクレジットの発行が認められました。なお、7月10日には、JA鹿児島県会館において、今回のクレジット発行を記念してLinkhola野村代表からJA鹿児島県経済連 柚木会長へカーボンクレジット発行証書が授与されるとともに、三者で実証結果の報告会を開催しました。
今回のクレジット発行を皮切りに、JA鹿児島県経済連・Linkhola・AmaterZは、本プロジェクトを生産性向上と環境保全を両立する新たな畜産モデル(kモデル)の普及に向けた取り組みとして進め、飼料コスト低減や県内肉用牛農家向け普及拡大を図るとともに、他畜種や他分野への展開も視野に、持続可能な農業の発展を目指します。
【問い合わせ先】
☞「本プロジェクト」、その他全体
JA鹿児島県経済連 営農戦略推進室 TEL:099-258-5491
kei.y.miyata@ks-ja.or.jp
☞株式会社Linkholaの取り組み
株式会社Linkhola 事業開発部 TEL:03-6821-1822
https://www.linkhola.com/linkholacontact/
☞株式会社AmaterZの取り組み
株式会社AmaterZ 本社広報 中島、矢島 TEL:03-6680-7779
info@amaterz.com
*1:GHGとは、Greenhouse Gasを略した環境用語で、温室効果ガスのことをさします。畜産由来のゲップによるメタンや、排せつ物によるメタン(CH4)・一酸化二窒素(N2O)が、二酸化炭素(CO2)の数十倍、数百倍の影響があるとして、国際的にもそれらの対策が喫緊の課題となっています。
*2:「t CO2e」とはGHGをCO2に換算した重量tの単位です。本プロジェクトでは、メタン(CH4)はCO2の28倍、N2O(一酸化二窒素)は265倍の地球温暖化係数をかけてCO2の重量に換算しています。
*3:補助飼料においては、反芻由来と排泄物由来のメタン、アンモニアの削減効果、牛への安全性、生産性効果、価格の4点を重点項目として総合的に評価・選定を行いました。
*4:アニマルゾーンとは、家畜が日常的に曝露されている飼養空間を指します。実際の家畜の行動空間の状態を把握することにより、GHG排出量や飼養環境の影響をより的確に評価できる概念として、農業現場や研究分野で注目が高まっています。
*5:ボランタリークレジットとは、民間主導によるカーボンクレジット制度です。国内では国が主管するJクレジット制度が一般的に知られていますが、欧米を中心に国際取引できるクレジットとしてその市場規模が拡大しています。
*6:EARTHSTORYとは、㈱Linkholaの運営する民間主導のボランタリークレジットの申請、審査、発行までをワンストップで提供するプラットフォームで、国内外でボランタリーカーボンクレジットを創出し、販売し、収益を得ることのできるカーボンインフラサービスのことです。